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ハトの仲間は、砂漠や高山や極地を除いた全世界に分布しています。いずれも体はずんぐりしていて、羽毛は柔らかく、密に生えています。頭は小さく、クチバシも2〜3種を除いて比較的短く、クチバシの先端は固いのですが、基部は柔らかいです。鼻孔の上にろう膜(上クチバシ基部を覆う裸の皮膚で、種によっては鼻コブとなる)があります。尾は多くの種で幅広く、比較的長く、脚は普通短いです。雌雄は一般にほぼ同色(雌の方が多少地味である)です。
ハト類の多くは樹上に生息していますが、キンバト、スズメバトなどは、主として地上で生活しています。体は重いですが、胸筋がよく発達し、力強く羽ばたいて、速く飛びます。食物はほとんど植物質で、穀物、種子、液果などの果実や葉などを食べ、このため「そのう」と「さのう」はよく発達しています。
また、生まれたての雛は、そのうの内壁の細胞が剥離したものからなる牛乳に近い組成を持つ「ピジョンミルク」で育てられます。
巣は、枝上に小枝を積み上げただけのものが多く、地上・岩棚・地下の穴などに営巣する種もいくらかいます。1腹の卵は1〜2個(稀に3個)。雌雄とも抱卵・育雛に従事し、雛は晩成性です。
樹上、地上、どちらにも生息する生命力の強い鳩
キジバトは、日本で最もよく見られる鳥の一つです。北海道から与那国島まで分布繁殖し、山地から市街地まで、さまざまな環境に生息します。北海道をはじめとする北日本ではおもに夏鳥で、冬季は暖かい地方へ移動しますが、その他の地域では周年生息します。
キジバトに限らず、種子食のハト類の生態はよく似ており、特徴的なのは、育雛にピジョンミルクと呼ばれる栄養物を用いるという点です。ピジョンミルクは、雌雄両方がそのうで生成し、成分としてタンパク質を多く含んでいるほかに、雛の成長を促進する物質も含んでいると考えられています。ピジョンミルクの利用は、繁殖における昆虫というタンパク源の必要をなくし、このことがおそらくハト類の繁殖に大きな影響を与えていると考えられます。
栄養豊富なピジョンミルクが鳩を必要以上に繁殖させます。
多くの小鳥類は、親鳥は種子食であっても、育雛には昆虫などの動物性タンパク源を用います。これが、チョウやガなどの幼虫が大量に発生する春から初夏に、小鳥類の多くが繁殖する理由だと考えられます。これに対してハト類は、植物質の餌だけで育雛することが可能なため、繁殖期が春から初夏に限定されません。
キジバトが留鳥である京都では、年間を通じて営巣が記録されています。ただしその頻度は8〜10月がピークであり、12〜2月にはあまり活発ではありません。また夏鳥である北海道では、4月から10月まで繁殖が記録されており、これはキジバトが北海道で記録されるほぼ全ての期間にあたります。
キジバトの繁殖は、雌雄各1羽が造巣から抱卵・育雛まで協力して行います。1腹の雛を巣立たせるには、産卵から巣立ちまで30〜35日程度かかります。
繁殖はほとんど年中可能なので、年に何度も繁殖を行うことができます。京都での観察によると、多くのつがいが年に何回か繁殖を行い、6〜8回にも及ぶつがいもいます。繁殖はほとんどの場合、同じつがいで行われ、つがいの相手が代わるのは、相手がいなくなったときにほぼ限られます。
アメリカの学者の研究によるとハトの繁殖について下記のようにまとめられています。
ハト類は育雛にピジョンミルクを用いるため、繁殖がある決まった時期に限定されない。そのため繁殖可能な時期が長くなり、年に何度も繁殖することが可能になった。さらに、単に1年間に何度も繁殖するのが可能になっただけでなく、ハト類は古巣の利用や繁殖の重複(clutch overlap)などといったことも年にできるだけ多くの繁殖を行うため、と説明しています。
年間を通して繁殖期間がある鳩
古巣の利用は、キジバトの繁殖においても、目立った特徴としてあげることができます。キジバトの巣は小枝などを雑に組み合わせたもので、下から巣の中の卵が見えることも少なくありません。しかしそんな雑な巣をつくる手間すらはぶき、古巣を利用することも多いのです。古巣の利用といっても少しは巣材を運んで補強はしますが、新たに一から巣を作るよりは手間がはぶけるのは確かで、京都での調査によりますと、繁殖の約43%は古巣を利用したものでした。
キジバトは自分が使った古巣だけでなく、他の個体が使った巣まで利用します。さらに同種の古巣を利用するだけでなく、ヒヨドリ、モズなどの古巣を利用することもあります。もっともこの場合は、むしろ他種の古巣を、自分の巣をつくるための基礎に利用するという面が強いのですが・・・。
年間を通して繁殖期間がある鳩
繁殖の重複とは、ある繁殖が終わっていないのに、次の繁殖を始めることを指します。キジバトは雛がかえってから数日は親鳥が雛を温めますが、その後親鳥は雛への給餌のために、日に数度、巣にやってくる程度で、その他のほとんどの時間は他の活動に費やすことができるため、育雛の後半には、次の繁殖のための造巣などを開始することができます。
実際に、育雛の後半に次の巣場所を探し始め、巣立ち雛に給餌を行う一方で新しい巣をつくり始めることが、キジバトで観察されたことがあります。
キジバトの繁殖の失敗で最も多い原因の一つは、卵や雛が他の動物に補食されてしまうことです。捕食者としては、ハシボソガラス、ハシブトガラス、イエネコ、アオダイショウが観察されたことがあります。カラスによる捕食を観察した例では、親鳥は抵抗などはせず、ただ逃げ出すだけでした。つまり捕食者に見つかってしまえば、親鳥にはなすすべがないのか、あるいはなにも抵抗する気が無いようです。
産卵から巣立ちまでの期間、巣を動かすことはできないので、その間に一度でも捕食者に見つかればそれで終わりです。したがって、どこを巣場所として選ぶかが、繁殖が成功するか失敗するかを大きく左右します。さきほど古巣の再利用について述べましたが、他の捕食者に見つからなかった実績が再利用に繋がっているのかも知れません。
また、人間の生活に近い場所、例えばマンションのベランダ、公共施設の軒下などは天敵も近寄りにくいため、格好の巣場所なのかも知れません。
巣場所選びは、雄が巣場所の候補地で雌を呼ぶところから始まります。雌がやってくれば、2羽でしばらくそこにうずくまり、この段階で雌がそこを気に入らなければ、雄はまた別の場所に行って雌を呼びます。雌がそこを気に入れば、雌を残したまま雄はどこかへ行き、巣材をくわえて戻ってきて雌に渡します。こうして造巣が始まります。
繁殖するのに大切な要素である一つに、巣場所選びがある。